私が23歳の時の話です。
彼とはとあるバーで出会い、初対面でしたが、話が弾み、容姿がタイプだったこともあってワンナイトラブをしたんです。
そういった経験は初めてでは無いですし、私自身割り切っていました。
目が覚めればまた他人に戻るのだと。
ワンナイトラブのはずがデート
しかし彼は違っていました。
私が目を覚ますと彼はコーヒーを入れていて、私をデートに誘ったのです。
ワンナイトラブでは連絡先も交換しないし、出会いに繋げないという自分ルールがあった私ですが、彼がどうしても一緒に行きたい場所があるというので、半ば強引にデートすることになりました。
彼が連れて行ってくれたのは新宿御苑です。
ちょうど4月ということもあり、桜が満開でした。
彼にはそんな新宿御苑で毎年桜を見ているお気に入りの場所があるようで、そこに私を連れ出したかったそうです。
確かに桜が綺麗に映える場所で、気に入る理由も納得出来ました。
その後とりとめもない話をして、4月は私の誕生月でもあるのでそんな話もしました。
みたらし団子をくれて交際スタート
しばらくすると彼がトイレに立ち上がり、私は一人で待ちぼうけていました。
やけに遅かったのが気になりましたが、彼が何かを持って帰ってきたのです。
「誕生日おめでとう」
彼がくれたのはみたらし団子でした。
「ごめんね、こんなのしか売ってなくて・・・お団子嫌い?」
子供のうように困った顔をしながら申し訳なさそうに尋ねる彼に愛しさを感じ、自然と交際は始まりました。
最初はありきたりなデートを重ねて、正式に交際を申し込まれた時は少し洒落たお店を予約してくれて、交際は順風満帆に始まりました。
突然のカミングアウト。彼は結婚していた
しかし、カミングアウトは突然訪れました。
それは交際を始めて2か月くらいした時です。
彼が大事な話があるというので時間を作り合う事にしました。思いつめた表情で黙り込む彼でしたが、意を決して話し始めました。
「俺、実は結婚してるんだ」
飲みかけたコーヒーを吹きそうになりました。
え?え?その後、彼はさらに続けました。
「でも君とは一緒にいたい。でも離婚はしたくない。俺はどうしたらいいかな?」
普通なら怒るところなのかもしれませんが、当時の私はあまり結婚願望も無く、別に彼を独り占めした気持ちもなかったので、彼が私と一緒にいたいというならば、奥さんにばれて離婚されないように工夫して付き合う事を始めたんです。相談しながら不倫を始めました。
サバ読みもあった。服装を決めた
まず始めたのが会う時の服装でした。実は彼、年齢もさばを読んでいて、私が聞いていたより5歳も上だったんです。
歳の差があるのでもし奥さんの知り合いに会ったら言い訳が難しくなります。
その為、彼の年代に合わせて落ち着いた服装で会うようにしました。
知った時は既に夏だったので私はキャミソールなどを着たかったのですが、そういった肌の露出が多い服を控えたのです。
実際別れるまで何度か別れるまでに知り合いに会うことがありましたが、彼が英会話教室に通っていたので、そこに一緒に通っている生徒だという事で誤魔化すことが出来ました。
ニオイにも気を付ける。消臭剤を徹底
更に匂いにも気を付け始めました。嗅覚って非常に敏感で慣れない匂いを瞬時にかぎ分けることがあります。
香水もそうですが、食事をすると衣服にもかなりの匂いが染みつきます。
もちろん職場の同僚と食事したという言い訳も出来ますが、何かの拍子でつじつまが合わなくなったり、頻度が多いと怪しまれる原因にもなります。
その為彼とデートする際は衣服用の消臭剤を持って行きました。
これはかなり徹底していました。
彼のクレジットカードは使わない
またこれはインターネットからの情報でしたが、会計では彼のクレジットカードは絶対に使いませんでした。
出来るだけ現金で支払いを済ませるようにしていました。
彼が不在の際にクレジットの明細が届き、使途不明金があればそれも不安要素になり得ると感じたからです。
そんな工夫をしながら、別れる直前までは言い方は悪いですが不倫という状態を少し楽しみながら交際していたんです。
奥さんからの電話
しかし、状況が一気に変わる出来事が起きました。それは彼からの着信でした。
いつも通り電話に出た私は、驚愕してしまいました。
なんとそれは彼の奥さんからの電話だったのです。
もちろん彼の電話帳にも細工はしてあったのですが、その時はどうしてバレたか、よりも焦りの気持ちで一杯でした。
怖いくらい丁寧な言い方で一度ゆっくり話がしたいと新宿のとある喫茶店を指定されました。
待ち合わせ時間前に着いた私でしたが、既に奥さんは到着しており、遠目にその姿を確認しながら、心を引き締めました。
簡単な挨拶を交わしたあとに、私は先手を打ちました。
「ごめんなさい」
少し泣きそうになりましたが、奥さんはいたって冷静に私に頭を上げるように言いました。
奥さんの覚悟。彼が幸せならそれでいいと聞き
そして今度は奥さんが語り出しました。
浮気については随分前から知っていた事、彼は今日の事を知らない事、元々夫婦仲が冷めきっていた事、それが最近になり出会った頃のように旦那さん(彼)が明るくなった事・・・
本来であれば罵倒され激怒されてもいい場面でしたが、語り出した奥さんの表情はどこか悲しそうでした。
話を聞き終えて、私の中で怖いけどどうしても確認しなければいけない事がありました。
「不倫されて、辛くないんですか?」
奥さんは少し考えた後、こう答えました。
「辛くないと言えば嘘になるけど、それでも彼が幸せならそれでいい。彼を愛しているから」
私はそこで初めて、自分がいかに愚かな事をしていたのかと奥さんに申し訳なくなりました。
「これからも旦那をよろしくお願いします」
と頭を下げた奥さんの姿を見て私は決心しました。
彼との別れ。あの人の存在
数日後、私は彼と別れました。
奥さんの事は話していません。
理由も他に好きな人が出来たと半ば強引に作り上げました。
正直あの判断が正しかったかなんてわかりません。
不倫が罪かどうか、そこに愛があればいいんじゃないか・・・賛否両論です。
正直それでも私は彼の事が大好きでした。
でも私が彼と付き合う事であれほど悲しそうに頭を下げる方がいるという事実を知った以上その関係を続けることは出来ませんでした。
その経験があり、不倫や浮気について、仮にワンナイトラブであっても考え直す自分になりました。